こんにちは!
居住・収益の目的を問わず、物件を選ぶにあたって日当たりを気にされる方は多いのではないでしょうか?
快適な住まいづくりにおいて、日当たりは欠かせない要素の一つです。特に日本では、昔から「南向きの家」が好まれる傾向がありますよね。これは明るさだけでなく、冬の暖かさや洗濯物の乾きやすさといった生活の質に直結しているからです。
一方で都市化が進む現代では、限られた敷地により多くの住宅を建てる必要があり、隣家との距離が縮まる中で、周囲の住環境への配慮が求められるようになりました。そこで登場するのが、「主要採光面」と「日影規制」という建築基準法に基づくふたつの重要な考え方です。今回はその「主要採光面」と「日影規制」についてお伝えしていきますね。
⚪︎主要採光面とは?
「主要採光面」とは、居室に自然光を取り入れる主な開口部が設けられた建物の面のこと。
たとえば、マンションであれば多くはベランダ(またはバルコニー)側が該当します。建築基準法では、居室には床面積の1/7以上の採光有効面積が必要とされ、日当たりの良い設計が住宅の基本とされています。
特に日本のような北半球の国では、南向きの採光面を確保することで冬の日射を取り込みやすく、エネルギー効率にも貢献します。ところが、この採光面を確保しようと建物を高く・大きくすると、今度は周囲に影を落とすことになり、別の問題が生じます。
⚪︎日影規制とは?
そこで重要となるのが「日影規制」です。これは、中高層建築物が近隣に長時間影を落とすことを防ぎ、周囲の住環境を守るためのルールです。建築物の高さや日影が及ぶ時間・距離を制限することで、適切な日照を確保しようという目的があります。
①規制の対象と時間
対象となるのは、地域ごとに定められた高さ以上の建物です。たとえば第一種・第二種低層住居専用地域では、高さ7メートルまたは地上3階以上の建築物が規制対象になります。
規制時間の基準は、一年で最も影が長くなる冬至日。通常、午前8時〜午後4時の間に、一定の敷地範囲内に日影をどれだけ発生させるかが問われます。
②測定方法と規制範囲
影の測定は、地表面ではなく「測定面」と呼ばれる高さで行われます。一般的には、1階の窓の高さにあたる1.5メートル(低層住居地域)や、2階・3階にあたる4メートルや6.5メートルが基準です。
また、敷地境界から5メートル~10メートルの範囲内での影の発生時間が規制されており、例えば「5時間以内に抑えること」「10メートル超では3時間以内」といった具体的な数値が設定されています。
⚪︎採光面と日影規制のせめぎ合い
採光面を広く取って快適な室内を確保したい一方で、日影規制により建物の配置や高さに制限が生じることがあります。特に、敷地が南北方向に並ぶ住宅街では、自宅の採光面が隣家の日照を妨げてしまうことも。こうしたケースでは、設計段階での工夫が求められます。
屋根や外壁の形状を変える、建物のボリュームを南側に寄せないなど、設計者は複数の規制を踏まえて最適解を探る必要があります。
⚪︎日影規制の緩和措置
日影規制には、敷地や周辺状況に応じた緩和規定も存在します。以下のようなケースでは、規制が一部緩和される可能性があります。
・道路や水辺に面している敷地
影が当たっても居住に支障が少ないため、制限が緩和されることがあります。
・地盤の高低差
周囲よりも低い敷地では、影の影響が軽減されるため、条件付きで規制が緩くなることがあります。
・塔屋などの設備スペース
階段室や機械室などは、一定の大きさまで規制対象外となることがあります。
これらの緩和措置は、役所への相談や確認申請時に判断され、柔軟な設計が可能になるケースもあります。
住まいにとって、明るさと日当たりは単なる快適さ以上の意味を持ちます。健康的な暮らしや省エネ性能にもつながる一方で、周辺との関係性も考慮しなければなりません。
「主要採光面」は自分の生活を豊かにする設計の中心であり、「日影規制」は近隣と調和するための社会的ルール。どちらも建物を建てる際の重要な視点です。
これから住宅の新築や購入を考えている方、都市開発や不動産に関心のある方にとって、この2つの概念は、住まい選びの質を高めるためにぜひ知っておきたいキーワードといえるでしょう。
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