知らないと損をする「法定地上権」の基本と実務ポイント!

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こんにちは!

不動産の権利関係は複雑で、ときに思わぬトラブルの火種にもなります。その中でも、「法定地上権(ほうていちじょうけん)」という制度をご存じでしょうか?これは、土地とその上にある建物の所有者が異なる場合に、自動的に成立する特殊な地上権です。不動産に関わる人にとっては、避けて通れない重要な法律概念です。

この記事では、「法定地上権」とは何か、どんなときに成立するのか、そして注意すべきポイントまでをお伝えしていきますね。

⚪︎法定地上権とは?

民法では、土地と建物はそれぞれ別の不動産とされています。たとえば、ある人が土地を所有し、その上に別の人が建物を建てている場合、それぞれ別の所有権が認められます。通常は賃貸借契約などでその関係を整えますが、問題になるのは、もともと土地と建物を同じ人が所有していたケースです。

たとえば、ある人物が土地と建物を一体で所有していたが、土地に設定された抵当権に基づいて土地だけが競売にかけられ、別の人に渡ってしまったとします。この場合、新しい土地所有者は「自分の土地だから建物を取り壊したい」と言いたくなるかもしれませんが、そうなると建物の所有者に著しい不利益が生じてしまいます。

そこで登場するのが「法定地上権」です。これは、土地と建物の所有者がもともと同一だった場合に、競売によって一方の所有権が移ったとき、自動的に建物のための地上権が成立したものとする制度です。つまり、建物の存続を法律で守る救済措置と言えます。

⚪︎成立には4つの要件がある

法定地上権は誰にでも成立するわけではありません。成立には以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。

①抵当権設定時に建物が土地上に存在していたこと
建物が後から建てられたのではダメです。抵当権が設定された時点で、建物が既にその土地上に存在していた必要があります。

②土地と建物の所有者が同一だったこと
抵当権設定のタイミングで、土地と建物の所有者が同一でなければなりません。元から別の所有者だった場合は対象外です。

③競売によって土地(または建物)の所有者が変わったこと
所有者の変更が、贈与や相続などではなく、裁判所による競売によるものでなければ成立しません。

④有効な抵当権が設定されていたこと
抵当権自体が無効な場合は、当然ながら法定地上権も成立しません。

この4要件をすべて満たすと、法律の力によって自動的に地上権が成立します。

⚪︎法定地上権が成立するとどうなるか?

法定地上権が認められると、建物の所有者は、土地を買い取った新しい所有者に対しても「この土地を使い続ける権利があります」と主張できます。土地の所有者は、その建物を勝手に取り壊すことはできなくなります。

では、どのくらいの期間その地上権は続くのでしょうか?民法では、以下のように規定されています。

・石造やコンクリート造などの堅固な建物:30年以上

・木造などの非堅固な建物:20年以上

また、地代については当事者間の協議で決まりますが、話がまとまらなければ裁判所が決定します。地代の額は、土地の利用状況や地域の相場などを参考にして決まるのが一般的です。

⚪︎借地権との違いに注意

法定地上権と混同されやすいのが「借地権」です。

どちらも土地を使う権利ですが、次の点で決定的に違います。

借地権:契約により成立(当事者の合意あり)

法定地上権:法律により自動的に成立(合意なし)

つまり、借地権は「最初から借りるつもりで土地を使う」のに対し、法定地上権は「本来は同一だった所有者が競売などで分かれたことによって後から発生する」ものです。

⚪︎実務での注意点とリスク

法定地上権は便利な制度ですが、以下のような注意点もあります。

・土地を競売で取得する場合の落とし穴
建物が残っていれば、法定地上権が成立している可能性があります。その結果、自由に土地を使えないリスクがあります。

・建物の担保価値
法定地上権が成立していれば、その建物は土地を利用できる保証があるため、担保価値は高くなりますが、地代や存続期間に関するトラブルが生じることも。

・建物滅失時の扱い
火災などで建物が滅失すると、法定地上権も原則として消滅します。再築が認められるかはケースバイケースです。

法定地上権は、不動産取引や競売物件の購入を考える上で知っておきたい制度です。知らずに進めると、土地が自由に使えない、建物が思ったより価値がない、といった事態に直面することがあります。

一方で、正しく理解していれば、建物の権利保護や取引の安定に役立ちます。もし、関係する不動産に法定地上権が絡んでいる可能性がある場合は、事前にご確認されることを推奨致します。

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