不動産投資を始めるにあたり、理想の物件を見つけた瞬間から本格的な取引が動き出します。その最初のステップとなるのが「買付証明書」の提出です。
「ただの意思表示の書類でしょ?」と思う方もいますが、実際にはその後の価格交渉や契約条件に大きな影響を及ぼす重要な書類です。投資家として効率よく、かつリスクを抑えながら取引を進めるためには、この書類の役割を正しく理解しておくことが欠かせません。
今回は、不動産投資家が知っておくべき買付証明書の基礎知識から書き方、注意点までをわかりやすく解説します。
◯買付証明書とは?
買付証明書(買付申込書)は、「この物件を買いたい」という意思を売主に示すための書類です。法的拘束力はありませんが、買主の本気度を伝える役割を果たします。不動産会社によって「購入申込書」「買受申込書」など名称は異なりますが、内容はほぼ同じです。
書類には、氏名や住所、購入希望価格、契約希望日、手付金の額、住宅ローン利用の有無、特約事項などが記載されます。投資家にとっては「どんな条件で買いたいのか」を明文化し、交渉の土台をつくる重要なツールと言えます。
◯投資家にとって買付証明書が重要な理由
・購入意思を示すことで優先権を得やすい
人気エリアや利回りの良い物件には競合が集まります。買付証明書を提出することで、売主に「本気の購入希望者」と認識され、商談を優先してもらえる可能性があります。
・価格、条件交渉の出発点になる
売出価格そのままでも、値引きを希望する場合でも、書面に残すことで交渉の基盤が明確になります。投資家にとっては利回りを左右する大事な要素です。
・物件を一時的に押さえられる
受理されれば「商談中」となり、他の購入希望者が手を出せなくなる場合があります。融資の事前審査や条件整理を落ち着いて進められる点は大きなメリットです。
◯買付証明書の主な記載内容とポイント
・物件情報
所在地や物件種別(マンション、戸建、土地など)、号室や名称を正確に記入します。投資対象が複数ある場合は、間違いを避けるため慎重に。
・買主情報
氏名・住所・連絡先に加え、署名と捺印を行います。法人で投資する場合は会社名・代表者名を記載することもあります。
・購入条件
購入希望価格:キャッシュフローや利回り計算に直結するため、投資シミュレーションに基づいた金額を提示しましょう。
手付金額:通常は価格の5〜10%。流動性を考え、無理のない範囲を設定します。
契約希望日・引渡し日:融資審査のスケジュールに合わせて現実的に。
住宅ローン利用の有無:借入額や金融機関名を明記しておくと、売主の安心感につながります。
・特約事項
ここが投資家にとって最も重要です。例としては、
ローン特約:融資否認時に契約を白紙解約できるよう明記。
設備修繕特約:給湯器やエアコンなどの不具合があれば売主負担で修繕。
境界確定の特約:土地取引では測量や境界明示を条件に。
既存不適格対応:法規制違反が判明した場合の責任所在を明確に。
特約を入れることで、投資リスクを大きく軽減できます。
◯提出時に注意すべきポイント
・内容をよく確認してから署名
一度提出すると修正は難しいため、価格や特約は特に慎重に。不動産会社と十分相談してから書きましょう。
・ローン特約は必ず希望を伝える
実際の契約書に入れるのが一般的ですが、買付証明書の段階で要望を明確にすることが安心につながります。
・安易なキャンセルは信用を失う
法的拘束力はなくても、売主や仲介会社の信頼を損ねれば、今後の投資活動に不利になります。本気で購入を検討する物件にのみ提出することが鉄則です。
・複数物件への同時提出は避ける
仮に両方で受理されれば、どちらかを断らざるを得ずトラブルになります。投資家としての信用を守るためにも、1物件ごとに誠実に対応しましょう。
買付証明書は、不動産取引のスタートを切る大切な書類です。投資家にとっては、単なる形式的なものではなく、希望条件を明示しリスクを減らすための戦略的なツールと言えます。
・人気物件では優先権を得る武器になる
・利回りや資金計画に基づいて価格を提示できる
・特約事項を活用すれば投資リスクを抑えられる
不動産会社や金融機関と連携しながら、自分に有利な条件で進められるよう工夫しましょう。
収益不動産売買のご検討、管理・経営でお悩みごとがありましたら、ぜひ弊社までお問い合わせください!(^_−)−☆