不動産業界の未来を守る──円滑な事業承継を成功させるための実践ガイド

ブログ 不動産投資初心者向け講座

こんにちは! 今回は「事業継承」についてのお話をしていきますね。

日本では人口減少と高齢化が進み、不動産業界も大きな転換点を迎えています。近年は不動産投資が一般層にも広がり、市場そのものはまだ活気を保っていますが、中小の不動産会社では経営者の高齢化と後継者不足が顕著です。

特に地域密着の不動産会社は、長年築いてきた地域との信頼関係、物件の目利き力、管理ノウハウなどの“無形資産”が企業の価値そのものです。これらが承継されないまま途絶えてしまうと、地域の不動産市場や不動産投資家にも大きな影響が生じます。

つまり事業承継は、単なる引き継ぎではなく、企業の存続・地域経済の維持・不動産投資市場の安定に直結する重要なテーマなのです。

1. 不動産業界の事業承継が抱える特有の課題

不動産業は、他の業種と比べても承継の難易度が高いといわれます。その理由は次の通りです。

(1) 許認可・資格の引継ぎが必須

宅建業免許は法人や個人に紐づくため、承継の際には免許の名義変更や新規申請が必要です。また、宅地建物取引士などの有資格者の確保は、不動産投資家との取引においても信頼性を大きく左右します。

(2) 多額の不動産資産を保有しがち

自社ビルや投資用物件を資産として保有している会社も多く、
これが株価を押し上げ、相続税・贈与税の負担増につながるケースがあります。

不動産投資を行っている会社では特に、簿価と時価の差額(含み益)も承継の難易度に影響します。

(3) “経営者の顔”が事業そのものになっている

地域の地主、不動産投資家、仲介会社などとのつながりは、経営者個人の信用が源泉となっている場合が多く、この“属人性”をどう承継するかが最大の課題です。

2. 不動産会社が選べる事業承継の3つの方法

事業承継には大きく 親族内承継/役員・従業員承継/第三者承継(M&A) の3つがあります。

(1) 親族内承継

*メリット

・会社理念や文化を維持しやすい

・後継者育成を長期的に行える

・顧客からの心理的抵抗が少ない

*デメリット

・経営能力や意欲がないケースも

・相続税の負担が重くなりがち

・他の親族との調整が必要

(2) 役員・従業員承継

*メリット

・業務を熟知した人材が継ぐため混乱が少ない

・顧客、不動産投資家との関係性も維持しやすい

*デメリット

・株式の買い取り資金が負担

・前経営者の個人保証の処理が課題

(3) 第三者承継(M&A)

*メリット

・後継者問題をすぐに解決できる

・株式売却益を得られる

・大手傘下に入り、資金力や管理体制が強化される

*デメリット

・社風の変化による離職リスク

・地域顧客との関係が希薄化する可能性

・不動産会社は賃貸管理という“ストック型収益”があるため、
・不動産投資家向けサービスを展開している企業からM&Aニーズが高いのも特徴です。

3. 事業承継を成功させるための具体的ステップ

ステップ1:現状把握と事業の磨き上げ(5〜10年前)

・財務、契約件数、管理物件、不動産投資家リストなどの可視化

・個人資産と法人資産の整理

・不採算事業の見直し

・経営者保証の縮小、解除に向けた準備

ステップ2:後継者の選定と育成(3〜5年前)

・親族、社員、外部から候補者を選定

・宅建士など資格取得の支援

・地域の地主、不動産投資家との関係を徐々に引き継ぐ

・社長権限を段階的に移譲する

ステップ3:実行とクロージング(1年前〜)

・株式や事業用不動産の移転手続き

・宅建免許の変更、役員登記などの法的手続き

・顧客、取引先、不動産投資家への丁寧な告知

不動産業、特に不動産投資家と深く関わる会社にとって、事業承継は企業価値そのものを左右する重要なプロセスです。
準備は早いほど成功確率が高まります。

・10年単位での計画

・無形資産(信頼・ネットワーク)の引継ぎ

・資産評価と税対策の最適化

・従業員と顧客に安心感を与える承継

これらを丁寧に進めることで、会社の価値を守り、地域の不動産投資市場を支える存在として未来へとつなぐことができます。

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