収益物件を購入する際、「建物の品質」や「万一の備え」は見落とせないポイントです。とくに新築物件では、表面的な美しさに安心しがちですが、引き渡し後に構造や防水に関する欠陥が見つかれば、修繕費やテナント離れによる損失は無視できません。
そこで注目すべきが「住宅瑕疵担保履行法」です。この法律は、新築住宅の基本構造部分に欠陥があった場合、売主や施工業者が責任を果たせない状況でも、買主が補償を受けられる制度を整えたもの。収益物件を安定資産とするためにも、内容を正しく理解しておきましょう。
⚪︎法律の背景と目的
かつて、売主や施工会社が倒産してしまうと、たとえ建物に欠陥があっても責任を追及できないケースが多発していました。買主は泣き寝入りするしかなく、大きなリスクを抱えることに。
こうした問題を解消するため、2009年に施行されたのが住宅瑕疵担保履行法です。
目的は次の2点です。
①瑕疵担保責任の履行を確保すること
②購入者(投資家含む)を法的に保護すること
売主や建設業者に対して、法律で定められた瑕疵(欠陥)があった場合の補償を保険や供託金によって担保することが義務化されました。
⚪︎対象となる「瑕疵」とは?
この法律で対象となるのは、以下の新築住宅における2つの重要部分の瑕疵です。
・構造耐力上主要な部分(基礎・柱・梁・屋根など)
・雨水の浸入を防止する部分(屋根・外壁・開口部など)
例えば、地震で傾く、雨漏りが発生するといった重大な問題がこれに該当します。保証期間は引き渡しから10年間で、売主(または施工業者)にはこの期間の責任が課せられています。
⚪︎2つの履行手段:保険と供託
事業者(売主・施工会社)は、以下のいずれかの方法で保証を担保する義務があります。
① 住宅瑕疵担保責任保険
もっとも一般的なのがこの保険。国土交通大臣が指定する保険法人と契約し、万一事業者が倒産等で対応できない場合、保険法人が修補費用を負担します。さらに保険加入時には第三者による現場検査も行われるため、一定の施工品質も期待できます。
② 供託金
保険に代わり、一定額の現金を法務局などに供託する方法もあります。中小事業者や一部の大手が利用するケースがありますが、物件ごとに内容を確認することが重要です。
⚪︎収益物件オーナーが押さえるべきポイント
1. 保険証券・供託の有無を必ず確認
物件の引き渡し時には、「保険証券」または「供託の証明書」の交付が義務付けられています。保管し、内容(保証範囲・期間)を必ず確認してください。
2. 法律の保証対象は限定的
あくまで対象は「構造」や「防水」に限定されており、内装や設備、外構などは対象外です。エアコンや給湯器などの設備故障は、別途メーカー保証や管理体制でカバーしましょう。
3. 瑕疵発見時はすぐ連絡を
問題を発見したら、売主または施工会社に速やかに連絡を。連絡は書面(内容証明郵便など)が望ましく、対応不可の場合は保険法人へ請求手続きを行う流れになります。
4. 定期点検の徹底
入居者からのクレームが起きる前に、定期的な建物点検を実施しましょう。特に屋上や基礎まわりの劣化は雨漏りや構造劣化の初期サインになることがあります。
住宅瑕疵担保履行法は、投資用の新築物件であっても、マイホームと同じく適用されます。構造や防水に関する重大な瑕疵については、事業者の倒産リスクを含めて10年間保証されるのは、オーナーにとって大きな安心材料です。
購入前に書類をしっかり確認し、万が一の際にスムーズに対応できるよう、制度の内容をあらかじめ把握しておくことが収益性を守る鍵となります。
長期保有を前提とした不動産投資では、「初期品質の確保」と「トラブル時の備え」が成功の土台です。制度を正しく理解し、安心して物件を運用しましょう。
収益不動産売買のご検討、管理・経営でお悩みごとがありましたら、ぜひ弊社までお問い合わせください!(^_−)−☆